逃げ道を確保する雨宮慶太(後編)
(承前)その『ジェットマン VOL.3』での鈴木武幸プロデューサーの寄稿文から引用する。『鳥人戦隊ジェットマン』の企画立ち上げの頃の回想で、井上敏樹氏をメインライターとして抜擢する決定を下し、それに引き続き
若いライターには、若い監督が欲しい。それも、ビジュアルに凝り、新鮮で、絵作りにしっかりしたポリシーを持つ監督。「未来忍者」の雨宮慶太監督しか私には浮かんでこなかった。テレビシリーズは、未経験の彼だったが、私には障害はなかった。以下雨宮監督の才能に対する賛辞が延々と続く。
ただこれは鈴木氏にとっての自慢話でもある。若い才能を見抜く眼力が自分にあったからこそ、経験の浅い雨宮氏を起用するなどという大胆な決断ができたのだ、という。それは雨宮氏の言っていることと正反対である。戦隊シリーズが終了するなどという、大変な事態に直面でもしない限り、思い切った決断などできない人だ。鈴木氏に対して雨宮氏はこう言ったも同然である。
どっちが正しいのだろうか。軽々しく判断できる問題ではない。しかし経緯はともかくとして、結果的に雨宮氏にとっては鈴木氏は恩人ではないのか。それでこういう言い方をするのか。いやもちろん鈴木氏のプロデューサーとしてのやり方に批判があるならば、正々堂々きちんと批判すればいいのである。それこそ一種の「恩返し」だとも言える。なんでこんな仄めかしてケチをつけるような言い方をするのか。
また雨宮氏は、井上敏樹氏がメインライターに抜擢された経緯も、自分と同じようなものであったという印象を人に与えるような書き方をしている。これはもう明らかに事実と異なる。
そういえば井上敏樹氏もまた、戦隊シリーズの打ち切りの危機を救った救世主であるかのような噂を立てられることの多い人である。しかし本人はというと、自分をそのようにアピールするような発言はない(管見の範囲だが)。井上氏といえば、平成仮面ライダーやアニメの脚本、また小説の執筆と、幅広い分野で活躍し、また作品も高く評価されている人である。本物の勲章をたくさん持っている人は、ニセの勲章を欲しがる理由なんかないのであろう。
スーパー戦隊シリーズの視聴率(改訂版)
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