特撮ヒーローへの「誇りの強要」(補論)

東映ヒーロー悪役列伝
『東映ヒーロー悪役列伝』(2006年12月30日)

特撮ヒーローへの「誇りの強要」への補論
 特撮ヒーロー番組に出演し、誇らしい思い出として持っている人は、当然そのように言う。イベントにも出るしインタビュー記事にもなる。しかし嫌な思い出しか持っていない人も当然いるはずで、そのような人は黙っている。わざわざファンの夢を壊したいと思う人はいない。その結果として、ヒーロー番組に出たらそれを誇らしく思うのが当たり前である、などという勘違いが生まれる。
 ところが、「嫌な思い出しかない」ということが、いろいろな偶然が重なって公になることもある。故・曽我町子氏にとっての魔女バンドーラ(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)がそうである。この本に掲載された曽我氏のインタビュー記事は、ヘドリアン女王をはじめとする戦隊悪役への出演について熱く語りながらバンドーラについての言及が一切ない。そして編集部からの追記がある。ちなみにその本の発売時点で曽我氏は故人。

 編集部としては、当然この作品についてもうかがい、曽我さんから熱いコメントをいただいたのですが、後日、その内容に関して、ご本人から「話した内容をそのまま載せると一部の関係者の方に迷惑がかかる。かと言って、『ジュウレンジャー』について自分が語るのなら、先日あなた方に話した内容しかない」という旨の連絡を受けました。
 わざわざこんなこと書くなよとは思うが、書かなければファンから「なぜ触れられていないのか」という問い合わせがうるさいから書いたそうだ。
 しかしこんな思わせぶりな書き方をしても、曽我氏が『ジュウレン』出演でどんな不快な思いをしたかなどという話は、ネットで調べれば出てくるわけですよ。ただそのネットの情報だけでは、どの程度の不快さだったのか分からない。両方の情報を組み合わせることによって、もう本気で腹を立てていたということが分かる。
 もっともそのネット情報を読む限りにおいては、曽我さんのほうが誤解しているんじゃないかなあ、と思う部分もある。しかし曽我さんも、曽我さんが腹を立てた相手も故人となった今となっては詳しい事情が発掘される可能性は限りなく低い。
 もし仮に、『ジュウレンジャー』の良い思い出も悪い思い出もフランクに話せるような風潮があったなら、その過程で曽我さんの誤解が解かれる可能性があったかもしれない(誤解だったとしてだが)。そしてバンドーラを演じて良かったと考えを改める機会を持つことができた可能性もある。もっとも「ファンの夢を壊すな」というのも一つの考えではあるから、どっちがいいと一概に言えない。

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