ひし美ゆり子に対する疑念(後編)
最初、実相寺さんに持っていった話なんです。そうしたら彼が僕にハガキかなにかを寄越した。こうやって滅ぼされる宇宙人は弱いからだ、こういう弱い宇宙人には興味がない、みたいなことを書いてきた。「ああ、この人はマジョリティだ」と思った。彼はウチナーンチュ(内地人=沖縄人)の僕とは違う。そういう視点を持っていない。それですぐ引き取って、野長瀬三摩地監督に持っていったんです上原正三氏の「300年間の復讐」に関する発言。『東映ヒーローMAX Vol.31』(2009年12月)。ちなみにインタビュアーは切通理作氏。これに続けて
ただ、彼はまたそういう民衆臭さのないところに味がある。それが実相寺らしくて支持されるところじゃないですか民衆の視点があるから良い作品である、民衆の視点がないから悪い作品である――というわけではない。もっとも今どきそんな時代錯誤のプロレタリア芸術論なんか採ってる奴がいたら、そっちのほうがよっぽど変である。ちなみに第43話「第四惑星の悪夢」、シナリオ段階では住民の反抗が描かれていたらしい。それが最終的に省かれ、唐突にウルトラセブンが巨大化してビルを壊すという展開になったのは、単に尺の都合だったのかそれともそれ以上の意味があったのかについては判断を差し控える。
「遊星より愛をこめて」に民衆の視点なんかない。別にそれは構わない。しかし糾弾の矢面に立たされ、立場が悪くなった途端に「民衆」という権威にすがりついて批判をかわそうとする。よくあるパターンではある。しかしそういうのを卑劣な行為と言うのである。
樋口尚文氏は本当に『ウルトラセブン』のファンなのであろうか。だとすればファンの風上にも置けない。それとも単にカネのために仕事をしているだけなのだろうか。そっちの可能性のほうが高そうな気がする。
そしてその疑念は、その樋口氏と組んでこんな本を出したひし美ゆり子氏に対しても当然向けられるべきものである。
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