『仮面ライダークウガ』は過去の作品である(その2)
(承前)昭和の仮面ライダーシリーズでは、警察や自衛隊は出てこない。なぜなら、出てきても役に立たないからである。
ショッカーにしろデストロンにしろ、その技術力は人間の科学をはるかに上回っている。その陰謀を阻止できるのは、やはり人間の科学を超越した力を持った仮面ライダーのみ。ということは、もし仮に警察が仮面ライダーの戦いに協力し、そしてそれが結構役に立ったりすることがあれば、その敵はショッカー等に比べてずっとグレードダウンしたものであるに違いない。
実際『クウガ』の作中人物に、未確認生命体の出現によって人類の生存が脅かされている、などという認識を持っている人は皆無である。たとえば栃木県の住民には、「東京の方では物騒なことが起こっている」という程度の認識しかない。
昭和時代の悪の組織は、口先では人類絶滅だの世界征服だの大きなことを言っている割には、東京で町内一つ占拠できない。やろうとするたびに、たちどころにライダーに阻止されてしまう。それを変といえば変ではある。その点『クウガ』の未確認たちは、もう最初から東京でチョコチョコと事件を起こすことを目的にしている。それをリアルというのであれば、確かにリアルではある。しかしそれは随分と後ろ向きな話ではないのか?
『クウガ』の放映開始は2000年。忘れた人も多いだろうが、20世紀の人間にとって「21世紀」という言葉は、輝かしい理想の未来か、それとも破滅的な災厄か、どっちかというイメージだった。新世紀を迎えるまでに、何か劇的な変化が世の中に起こるに違いない、という漠然とした雰囲気が社会を覆っていた。結局何も起こらず、その反動として今度は、もはやこれからは劇的な社会変化なんて絶対に起こらないのではないか、かわりばえのない日常が永久に続くのではないか、という雰囲気が蔓延する。今まで人類の自由と平和を守るために戦ってきた仮面ライダーを、「人々の笑顔を守る」などというスケールの小さな戦いへと送り込んだスタッフは、自分たちが時代の最先端を行っているつもりだったに違いない。その後、貧困・格差問題の台頭、新冷戦の危機、原発事故。ドラスチックな社会変化は少し遅れてやってきた。「終わりなき日常」なんてもはや誰も言わない。
『クウガ』は時代をつかんだつもりで、ババをつかまされたような気がする。(続く)
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