なぜフニャコフニャ夫はFよりA似なのか
左から順にフニャコフニャオ67年/フニャコ・フニャオ68年/フニャ子フニャ雄70年/フニャコフニャオ71年/フニャ子フニャ夫74年/フニャ子フニャ雄77年/フニャコ82年/フニャコフニャオ89年
いまだに「F」だの「A」だのと言った呼び方に慣れない。
そりゃ確かに合作していたのは『オバQ』までで、その後は二人とも別々に描いていたというが、「僕たちは二人で一人だ」という意識が藤子不二雄の作風を規定していたのは間違いなく、それを今さら「これはFの作品、これはAの作品」とか言われてもハイそうですかと受け入れる気になれない。「不二」は「二つではなく一つ」という意味だ。
象徴的なのがフニャコフニャ夫という存在である。
F先生のマンガに出てくるキャラクターである。常に締め切り追われているマンガ家。F先生とA先生の似顔絵を混ぜて更にブサイクにしたような顔をしている……と言われている割には、どう見てもA成分のほうが圧倒的に大きい。普通こういうのって逆にしないか。と思って抜き出して年代順に並べてみたのが上の図である。
こうして見ると、最初は確かにFA半々だったのが、徐々にFもAも抜けていって、普通のマンガ家というキャラになっていくのが分かる。そしてフニャコフニャ夫が最も大きな活躍をしたのが『ドラえもん』の「あやうし!ライオン仮面」(1971年)である。
F先生のトレードマークは何といってもベレー帽とパイプである。だから潰れた目・タコみたいな口・メガネ・低い背と、全体的にはA先生を踏まえていても、ベレーとパイプさえ描いておけばFA半々といった趣になる。しかし「あやうし!ライオン仮面」では飛んだり跳ねたりわめいたりの大暴れだから、口に何かをくわえさせるのは無理があった。A成分はまだまだ残ったまま、F成分はベレー帽だけという、その時点でのフニャコフニャ夫で世間一般のイメージが定着した。
結果として、自分より自分の友だちのマンガ家をネタにしたキャラクターが大暴れして、「あやうし!ライオン仮面」は『ドラえもん』の中でも屈指の爆笑回になったわけだが、これが果たして最初から二人別々のマンガ家という意識のもとで執筆されていれば、これほど面白い話になっていたかどうか。
藤子・F・不二雄『ウメ星デンカ』「スイカとギャング」にも、ものすごくヒドい役でA先生が出演。
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