「アンケート至上主義」についての誤解

少年ジャンプ

 『週刊少年ジャンプ』の「アンケート至上主義」については勘違いしている人も多いように思われる。
 それは決して「目先の売り上げのことしか考えない」という意味ではない。いやもちろんそういう傾向はある。しかしそれと同時に中長期的な戦略をも編集部は併せ持っていたし、であればこそ1990年代に650万部などという驚異的な売り上げを記録することもできた。そしてそのバランスが崩れた時に、『ジャンプ』の低迷が始まったのである。
 短期的な視野しか持っていなかったことが『ジャンプ』の黄金時代をもたらすと同時にその後の低迷期をももたらした――と思いこんでいる人が多いみたいだが、それは間違い。
 諸星大二郎と星野之宣が『ジャンプ』でデビューしたということを知らない人も多そうだ。
 この二人の作風が『ジャンプ』向きではない、ということを編集部は分かっていた。分かっていた上でチャンスを与えたのである(ソースは失念)。当時はこういうことをよくやっていた。なぜかというと、雑誌の作風の幅を意図的に広げようと常に努力しておかないと、あっという間に同じようなマンガばっかりになってしまうからである。まあ結局はそうなっちゃったんだけど。そうなると、常に変化する大衆の嗜好に機敏に対処できなくなる。そして転落が始まる。
 つまり、長期にわたってヒット作をコンスタントに送り続けるためには、短期的視野と長期的視野の両方を持つ必要がある。よく考えたら当たり前のことなんだけど。しかし『ジャンプ』から間違った教訓を引き出す人もいて、「短期的視野しか持たなくてもソコソコ成功しうるが長続きしない」と考えたりする。そうではない。短期的視野しか持たなければ、ソコソコ成功することすら出来ないのである。

 さて戦隊シリーズに話を持って行くと、雑誌とかでスタッフのインタビューを読んでいたら、作品の成功・不成功を、単に玩具等のグッズの売り上げだけでしか判断しようとしない発言が最近になって急に増えてきているような印象がある。シリーズの作風の幅を広げるということに全然関心を持っていないかのようにも思える。
 大丈夫なのか。

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